きたベジファーム(神戸市北区)
農福連携で地域を守る。きたベジファームの挑戦。
障害のある人達とともに
NPO法人きたベジファーム(就労継続支援B型事業所)は、障害のある人たちが農業を行うことを目的に昨年立ち上げた事業所です。事業所の室内にいることは少なく、ほとんど農場に出て農作業を行っています。
今は9人の利用者さんがそれぞれやりたいこと、障害の特性や難しいことなどを理解してくれて、手分けして農作業や出荷作業を行っています。
当初の想定よりも早く利用者の工賃は上がっていて、有機栽培などの条件を考えると順調に野菜は育っていて、販売も順調です。
私が事業所の運営をするなんて
私は元々、丹波の有機農家で研修を受けた後、新規就農をしていました。その時は自分の人生の中でこういった事業所の運営をすることになるとは想定もしていませんでした。
神戸市北区で10年ほど前から農福連携や農産加工などを行う事業所が集まり、様々な課題を共有し意見を出し合うことで地域農業に貢献する「きたベジネット」という農福連携プロジェクトが始まりました。私も推進員として関わったり、事業所の支援スタッフにもなり、集まった利用者さんたちと農業を行ってきました。
ただ、福祉事業所が農業をするのはなかなか大変です。農業に参画するにはある程度資金も必要ですし、何より農産物を売るまでお金にならない。支援スタッフが農業を理解し利用者さんに教えないといけないなど、通常の室内での内職作業などにくらべて、かなりハードルが上がります。
理想と現実のギャップも多くありました。
それなら屋外でのびのびと農作業したい利用者さんだけに絞り、農業だけをする事業所を本腰をいれて立ち上げようとの思いがつのり以前の事業所から事業譲渡を受け独立しました。
就労支援施設を立ち上げるのは福祉制度のいろいろな知識も必要だったりで難しかったですが、利用者さんたちはいきいきと働いていますし、担い手が少なくなっている農村部において、私達の果たす役割も大きいと感じています。
日々の農作業
毎年作っているのはミニトマトやカラーピーマン。あとはキュウリやホウレン草などの定番野菜がウチの主力です。買う人が毎日使う野菜を意識して20品目は出すようにしています。
日々の農作業ですが、やはり細かな部分において、想定外のことは日常的にも起こります。たとえば水やりひとつとっても、同じ場所にずっと水をやりすぎてしまう、こちらは逆にカラカラなどもあります。また意外と高度な作業はできるけど毎日出勤するのが難しいなど。ハウスもあるので雨の日の作業も問題ありません。
有機野菜が人気。
販売に関しては神戸市北区と阪急六甲の2ヶ所の直売所がメインです。慣行栽培の野菜が多い中で私たちの有機栽培の野菜のファンになってくれるお客さんも多く、今では野菜が足りないことのほうが多くなりました。今後は生産力を上げていくこと、また運営の方がご高齢になられた阪急六甲の直売所などもいずれは自分たちで運営していくことを視野に入れています。
売り上げについては現在年間300万円ぐらいですが、500万円を超えたら有機JASの認定取得を目標にしています。
いまは野菜の値段設定が安めなのですが、売上を伸ばすためにも、値段設定を上げる必要があると思っています。
地元の名産『二郎(にろう)いちご』を支える
神戸市北区では『二郎(にろう)いちご』という市民に人気のイチゴの産地があり、農家さんたちも元気なのですが、人手が足りず作業を手伝ってもらえないかと頼まれ、何件かのイチゴ農家さんのお手伝いをしています。いちごの管理作業など、難しい作業はできないところもありますが、できる作業もいろいろとあり、喜んでもらっています。作業賃も作業所だからとは関係なくきちんと労働の対価をもらえていて、こちらも真剣に作業に取り組めますし、地域の発展維持のために貢献できるのはうれしいことです。
新たな目標
今、きたベジファームでは各地に分散している農地を一か所に集めようとしています。移動時間のロスを小さくでき、支援員と利用者さんの人員配置もしやすくなり、作業効率、販売効率もあがります。また、地域にもより認められる存在になり、事業所としての規模を大きくして、利用者さんも受け入れていきたいと思っています。
そのためには、支援員の増員も必要ですが、できれば農業の経験のあるかた、屋外農作業を厭わない方がいいなと思っています。支援員として収入(給料)も安定します。新規就農したけれど、一人農業は大変で収入も安定しずらいので、福祉の支援員として障害のある人たちと農業に携わる道も意義深いのではとおもいます。
一緒に汗を流し、野菜を育てるのは充実感がありますよ。
住所:兵庫県神戸市北区有野中町1丁目8-6OGビル2階電話:078-982-0300 メール:kabe@kobe-kita.vege.net