生搾り菜種油で差別化。伊賀市菜の花プロジェクトの取り組み
菜の花の栽培と菜種油の製造を通じて、資源循環型社会の実現を目指す「伊賀市菜の花プロジェクト」に取り組む、三重県伊賀市の大山田農林業公社。少子高齢化による農家の後継者の減少や農地の荒廃、地域の魅力低下など農村が抱える課題解決につなげようと活動を続けている。
菜の花プロジェクトの全国組織である「菜の花プロジェクトネットワーク」には国内で活動する約130の主体が加入している。菜の花プロジェクトは社会的に高く評価されるものの、経済的に採算が合いにくいといわれている。伊賀市の菜の花プロジェクトでは、遊休農地などで菜の花を栽培し、菜の花の種子の菜種を搾油して菜種油を製造。菜種油を地域の特産品として販売している。さらに、使い終わった菜種油はその他の廃食油と合わせて回収し、軽油代替燃料(BDF)を製造。BDFを車両や農業機械の燃料として利用し、再び菜種を栽培している。
差別化で黒字化目指す大山田農林業公社
同公社は、搾油事業とBDF製造事業を、伊賀市から指定管理契約で業務委託を受けている。契約内容面では行政からの支援を年々減らし、公社単独による黒字経営を目指している。菜の花プロジェクトを採算の取れる事業にしようと、他所にない高品質な新商品の製造技術の開発、ブランドイメージの確立に力を入れている。
伝統的な国産菜種油の製法は、搾油率を向上させるため原料の菜種を焙煎してから圧搾し、炒め料理、揚げ料理に利用される。この製法の菜種油は、小規模ながら国内各地で生産されているため、差別化が難しい。公社ではこの製法に加え、菜種を焙煎せず生のまま圧搾し、ドレッシングやマリネなどに利用する「生搾り菜種油」を製造する技術を確立した。
現在、栽培農家約50軒と栽培契約を結び、栽培面積は市内全体で60ヘクタールまで広がっている。総収穫量は豊作で33トン、不作だと20トン程度。単収は10アール当たり約50キロとなっている。収穫した菜種は公社がほぼ全量を買い上げ、菜種油商品の原料として使用している。
菜種商品の年間販売額は、2014年までは800万円前後で推移。販売戦略の工夫で2015年以降は1100万円に増加した。
菜種油搾油施設「七の舎」の管理者、亀井健司は「生産から製造まで一括管理しており、農家さんの顔が見える商品を展開している。安全安心の伊賀産の生搾り菜種油を、関西の方にも使ってもらえれば」と話している。
「農業の駆け込み寺」として耕作放棄を貸付
同公社は、旧大山田村時代に農地が高齢化などで耕作放棄されるのを未然に防ごうと、地元のJAと村民の協力を得て1995年に設立した。農業をやめたい人と新規就農したい人の間に立って農地を中間管理する事業にも取り組んでおり、2018年現在、所有者から約170ヘクタールの貸付け申し込みを受け、約110ヘクタールは地域の担い手に貸し付けている。借り手の見つからない60ヘクタールは、関連会社の大山田ファームが耕作している。
同公社の上田賢博会長は「農業をやりたい人、やれない人の中間に立ち、だれでも相談できる『農業の駆け込み寺』としてこれからも耕作放棄地が出ないように農地を守っていきたい」と語った。
菜の花プロジェクトを進める大山田農林業公社の上田賢博会長。
耕作放棄地を新規就農者へ提供するなど、
伊賀の農業にも大きく貢献している。
【大山田農林業公社】について
一般社団法人 大山田農林業公社
三重県伊賀市平田103
TEL:0595-47-0151(代) / FAX:0595-47-0244
WEB:http://noringyo.or.jp
農業を若者達が魅力を抱いて参入してくれる産業として、農地の保有と利用により自立可能な農業経営の確立を進め、担い手農家の規模拡大、農作業の効率化、農地の有効利用を図り、地域の農林業の核として農地管理はもとより都市と農村の交流を深めることに取り組み、公社を軸として「人が輝く、地域が輝く」まちづくりに向かって強力な事業展開を図っています。
また伊賀市で生産される農作物の認知度を高め消費者に優位販売することを目指して、農林産物加工施設を運営しています。
平成22年度から伊賀市の菜の花プロジェクトのセンターとして農業者間の情報、技術の集積を図り、菜種油の搾油と販売、バイオ燃料の有効利用を展開しています。